数年前から流行っている「酵素ドリンクダイエット」。
食事の代わりに「酵素ドリンク」と呼ばれる飲料を飲んで、それを食事と置き換えてダイエットをするというものです。
(こうしたダイエットは、運動せずに食事量を減らして減量するので、全く健康的だとは思いません)
よく「酵素は加齢とともに減少するので、外から摂取して補おう」と言われますが、本当にそうなのでしょうか?
実は、私たちの体の中で働く「酵素」は、私たちの体の中でしか作られません。
私たちの体には、消化をするための炭水化物分解酵素やタンパク質分解酵素、脂肪分解酵素などの「消化酵素」があります。
また、体の代謝機能や修復、合成、排出などの生命維持に欠かせない役割を果たす無数の酵素が存在します。
こうした様々な「酵素」は、DNAという設計図に基づいて、体の中でしか作られないのです。
また、口から「酵素」を摂ったとしても、酵素=タンパク質なので、自分自身の消化酵素によって分解されてしまいます。
さらには、植物由来の「酵素」などは、働いている環境が人間とは違うため、最大限力を発揮できません。
アメリカなどで販売されている「Enzymeサプリ」は、微生物が作った消化酵素などを粉末化し、口腔内や胃内で消化の負担を軽減することに特化したサプリです。
そのため、「酵素を直接体に補う」という、日本の「酵素ドリンク」とは全く異なるのです。
それに、もしも外来の「酵素」が腸から直接入ったら・・・、異物の腸からの侵入で排除されるか、アレルギーショックを起こしてしまいます。
それでは体内の「酵素」を増やすことは出来ないのでしょうか?
考え方としては2種類あります。
1. 酵素=タンパク質の材料となる栄養素をきちんと摂ること
「酵素」はタンパク質ですので、アミノ酸を材料として体内で作られます。
また、「酵素」が働くためには「補酵素」と呼ばれるビタミンや、ミネラルを必要とするものがあり、さらには糖が結合して働く「糖タンパク質」もあります。
伝統的な手法で作られている「発酵食品」は、乳酸菌や酵母、さらには土壌細菌によって作られるアミノ酸やビタミン、ミネラルなどの栄養素がバランス良く含まれています。
もちろん、バランスの取れた食事が最も大切です。
2. 「腸内細菌」を活発にすること
私たちの腸内には、1000種類1000兆個以上ともいわれる「腸内細菌」が住んでいます。
こうした「腸内細菌」たちは、実は私たちの「消化酵素」が分解しきれなかった食べ物を分解したり、アミノ酸やビタミンを作ってくれています。
その時に働くのが「腸内細菌」が作る「酵素」です。
そのため、「腸内細菌」を活発にすることが、体内(腸内)の「酵素」を増やして活性化することにつながるのです。
「腸内細菌」の中で、善玉菌で有名なのが「乳酸菌」「ビフィズス菌」です。
ただし、「腸内細菌」は1億人いれば1億パターンの構成があるように、ひとそれぞれ住んでいる菌種が大きく異なります。
そのため、単純に外から摂るだけでは、効果が限られています。
また、ひと言で「乳酸菌」といっても数百種類もあり、「ビフィズス菌」も数十種類も存在しています。
体に良いと謳われている特定の菌も、それだけでは自分の体に合うかどうかは分からないのです。
それでは、自分の「腸内細菌」を元気にするにはどうしたら良いのでしょうか?
自分自身の「腸内細菌」を活発にするためには、微生物が作ったものを与えるのが効果的です。
なぜなら、「腸内細菌」は腸の中で、お互いが作った代謝産物をエサにして生活しているからです。
そうすることで、生まれながらに自分に住んでいる最適な善玉菌などが、元気に働くようになります。
ここでもおすすめなのが、「発酵食品」です。
「発酵食品」は微生物の発酵によって作られますので、微生物の代謝産物が豊富に詰まっています。
つまり、腸の中で行われていることを、体の外で事前に行っているようなものです。
体の中の「酵素」、つまり「腸内細菌」が作る「酵素」を有効に利用するためにも、是非伝統的に作られている日本の「発酵食品」の摂取をおすすめします。
日本では「発酵エキス」を何故か「酵素」と呼ぶ風習が以前からあるため、ドリンクでない「発酵エキス」も「酵素」と分類されるなど、まだまだ科学的でない呼び名で認識されてしまうことが多々あります。
「腸内細菌」は「酵素」だけではなく、免疫や感染防御、疾患予防や脳の発達などにも、とても重要な働きをしています。
少しずつでもそうした正しい知識や考え方が広まっていくように、努力を続けたいと思います。
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