10年ほど前、記憶と学習の理解を目指して、遺伝子を変異させた認知能力の高いマウス(ネズミ)が作り出されました。
それから10年たった今、認知能力の優れたマウスが30種類以上も作られています。
このマウスは普通のマウスと比べると、学習が迅速で記憶が長時間持続し、複雑な迷路などの解決能力に優れています。
こういった脳の機能を高めることで、人間でも脳の働きを若返らせ、柔軟性を向上させることができるのではないかと言われています。
これまでは、脳は進化する(成長する)ことによって作られていくものであり、瞬間的に強化することは不可能だと思われてきました。
しかし、10年間のマウスの実験から、脳のある部分を刺激することで、能力を強化することができることが分かってきました。
先天性障害でも快復可能な例があります
さらに、先天的に正常に発達しなかった脳機能の修正にも光が見えています。
例えば、神経線維腫症やダウン症候群などの認知欠損も、マウスの実験では全て快復可能だという結果が出ています。
また、外傷後ストレス障害(PTSD)や薬物嗜好など、ネガティブな考えをポジティブに変えることにも利用できるかもしれません。
こういった結果は、多くの人々を救うことに繋がる可能性があります。
記憶が良すぎても困ることがあります
しかし、脳を操作して能力を上げることで、悪い面もあります。
例えば、それほど気にかけなくても良いことに対して、過度に反応してしまいかねません。
些細なことの詳細を覚えすぎて、脳にとってその記憶が重荷になるのです。
記憶や記録が多すぎると、全ての情報を重要だと認識し、本当に大切な手がかりを見逃してしまうのです。
脳は、「覚える能力」と同じくらい「忘れる能力」が重要です。
完璧な記憶と完璧な記憶を結びつけると、そこに衝突が生じてしまいます。
現代社会で新しいアイデアを作り出す時には、「既知の情報」と「既知の情報」から「新しい情報」を生むことが大切です。
ただし、そこには「わずかな記憶違いの不完全さ」という微妙なエッセンスが必要なのです。
「脳の強化」は必要な人にとってはとても重要なことだと思います。
しかし、その重要さを決めるのは、また「人」であり、そこに不確かさが含まれることを忘れてはいけません。
「頭がよくなる薬は必要か!?」その判断基準が、情報化社会においてますます重要な課題となってきますね。