腸内細菌叢を変化させると肥満リスクを軽減させることにつながることが、ラットを使った研究で明らかになりました。
この研究データはAmerican Society for Nutrition (ASN)で発表されています。
フランスの国立農業研究機関のDr. Mihai Covasaによると、肥満の人はやせている人に比べて、共通して特定の種類の腸内細菌が多い傾向にあることが記されています。
この特定の腸内細菌は、人が食べ物を摂取した際に、より多くのエネルギーを作り出す傾向にあり、その結果、そのエネルギーが脂肪として蓄積してしまうということです。
【試験内容】
肥満ラット(大型ネズミ)と肥満ではないやせ形ラットから、それぞれ腸内細菌を含む糞便を採集し、これを無菌マウス(腸内細菌が全くいない小型ネズミ)に投与しました。
この後、「通常食」と「高脂肪食」の2群に試験区を設置し、8週間モニタリングした後にデータ解析を行っています。
【結果】
肥満ラットから腸内細菌を投与し、肥満腸内細菌叢を定着させたマウスは、より多くの食事を食べる傾向にあり、体重も増加し肥満になりました。
一方で、やせ形ラットから腸内細菌を投与したマウスは、肥満にはなりませんでした。
また、肥満ラットから腸内細菌を投与されたマウスは、腸内の栄養代謝に関わるセンサーやペプチドの量に変化が生じていたそうです。
これが何を表しているかはまだ明確ではありませんが、どのように食事に対して反応しているかを調べると、興味深い結果が得られると考えられます。
今回の結果から、「肥満型腸内細菌」を持っていると、以下の影響が推察されます。
・同じ食事量でも太りやすい傾向が出てくる
・食事を食べる量が増えてしまう(行動にまでも現れてしまう)
肥満と腸内細菌の関係は、有名科学雑誌「Nature」でも2006年、2009年に発表され、大きな反響を呼んでいます。
また、日本の北海道大学でも高脂肪食と肥満腸内細菌叢との関連が報告されています。
現在は研究段階ですので、確実に「この微生物」という断定はできませんが、今後近い将来に、腸内細菌のバランスをコントロールすることで、肥満や肥満から生じる多くの疾患に対応することができると考えています。
また、個人的な予想ですが、親子で同じような肥満体型をしている場合、親から子へ「肥満型腸内細菌」が伝播している可能性もあると思います。
いかにして自分の腸内細菌を味方に付けるか、それが今一番最前線のトピックになっています。
Source: Abstract presented at the ASN conference "Gut microbiota modulates metabolic and nutrient sensing signaling pathways in obesity"
URL: http://www.nutraingredients.com/Research/Gut-bacteria-could-hold-key-in-obesity-fight
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