私たちのお腹の中に住んでいる微生物群を総称して、「腸内細菌」と呼んでいます。
腸内細菌は1000兆個を超える数が住んでいますが、その種類も1000種類以上になります。このバランス次第で、私たちに対して良い影響も与えますし、悪い影響も与えます。
例えば、腸内細菌が良いバランスを保っているならば、体の免疫系や神経系、内分泌系のバランスも保たれます。しかし、一方でそのバランスが崩れると様々な病気を引き起こす原因となります。最近では、科学情報誌「Nature」に『腸内細菌によってホスファチジルコリンが代謝されると、心血管疾患が促進される』という発表もされています。
このように、私たちの体に大きな影響を与える「腸内細菌」。それでは、その「バランス」とは一体どういったことなのでしょうか?
腸内細菌のバランスは2:7:1
一般的によく知られているのは「善玉菌」「悪玉菌」ですね。テレビなどでは単純に、善玉菌を増やしましょうとか、善玉菌が70%で悪玉菌が30%が理想的、と言われたりしています。でも、かなり単純にしても、そこまで単純にはできないと思います。もちろん「善玉菌」「悪玉菌」は存在しますが、「日和見菌」と呼ばれる菌も存在していて、実はこの「日和見菌」が最も多い割合を占めています。
[善玉菌]ビフィズス菌(乳酸菌):20%
乳酸や酢酸、酪酸などの有機酸を作り、腸内を酸性に保っている。酸は腸を刺激して便通を促す。また、有機酸は腸から吸収されて体のエネルギーとなって働く。
[悪玉菌]大腸菌、ウェルシュ菌など:10%
善玉菌が20%存在している時は、働きが抑制されている。しかし、悪玉菌が増えると毒素やガスを作ってしまい、色々な病気の原因となる。
[日和見菌]その他の微生物群:70%
善玉菌が20%ある時は大人しいが、悪玉菌が多くなると強調して有害物質を作り出す危険性がある。(日和見とは、有利な方に付こうとすること、形勢をうかがうことという意味)
このように、一般的に知られている「善玉菌」「悪玉菌」を合わせてもたったの30%程度です。残りの70%は「日和見菌」と呼ばれる、言ってみればどちつかずの菌で占められています。要するに、善玉菌を増やす努力をして悪玉菌を抑え、多くを占める日和見菌に悪さをさせないことが大切なのです。
また、「善玉菌」のところにビフィズス菌(乳酸菌)と書いたのもポイントです。腸内の善玉菌は乳酸菌と考えられがちですが、実は乳酸菌はそれほど多くありません。人の腸内では「ビフィズス菌」が優勢なのです。他のほ乳類では乳酸菌が主力なのですが、人ではビフィズス菌が優勢。これもまた面白いところですね。