今日、日本で初めて15歳未満の脳死判定が行われました。そして、その男子の臓器提供を家族が受諾しました。臓器移植法が改正された2010年7月以降、色々な議論がなされてきましたが、ついに子どもの臓器移植が実施されることとなりました。
以前は、15歳以上で本人による書面での意思表示が必要でしたが、現在は明確な意思表示は必要なく、生前に「拒否」をしていなければ家族の承諾で提供できることになっています。一つの条件の中には「虐待」を受けた疑いがないかどうかが論点になります。これは、虐待を受けて脳死になった子どもが臓器のドナーとなる危険性を確認するためです。
今回はこういった内容を全てクリアしており、15歳未満での初めての脳死判定となりました。
脳死とはどういった状態を指すのか?
脳死の状態を考える前に、脳の基本的な作りをおさらいする必要があります。人の脳は大きく分けて3つに分類することができます。
大脳:考えたり学習したり、感情をコントロールします。また、物を見たり聞いたり、声を出したりするのも大脳の役割です。
小脳:身体の平衡感覚をコントロールしています。
脳幹:呼吸、心臓運動、物を飲み込む力など、人が生きて行くうえで最も大切な役割をしています。
それでは、「植物状態」と「脳死状態」はどう違うのでしょうか?植物状態では、大脳と小脳は機能していませんが、脳幹は生きている状態です。そのため、自ら呼吸したり心臓を動かしたりすることはできるのです。
一方、「脳死状態」では、大脳も小脳も脳幹までも死んでしまった状態になります。そのため、自らの意思で呼吸することができません。人工呼吸器を付けることで、言えば強制的に呼吸させている状態になります。人工呼吸器を付けている時は心臓は動きますが、外すと心臓もそのうち停止してしまうのです。ただし、この状態では心臓は長くは保ちません。
脳死は人の死と考えられるのでしょうか?
日本では従来、「心臓の停止」=「人の死」であると考えられてきました。心臓が止まり、血液の流れもなくなって、体全体が冷たくなり、そういった感覚や状態を目の当たりにすることで、「死」を受け入れてきました。
そういった感情の中、やはり「脳死」を「死」と考えるのはとても難しい判断です。
脳死は、脳の機能は全て失われますが、人工呼吸器をつけて心臓が動いている限りは、血液も通い、体温もあり、髪の毛も爪も伸びるのです。しかし、植物状態であれば元に戻る可能性がありますが、脳死の場合はもとに戻ることはありません。
今回のような「臓器移植」は、「脳死=人の死」という判断のもとに行われています。心臓がまだ動いていて、臓器に血液が循環している状態であれば、その時に摘出した臓器は移植に使うことが可能です。そして、その臓器は多くの人の命に繋がって生きます。
今回の移植に伴い、家族がコメントを発表しています。
「息子は将来は世の役に立つ仕事をしたいと言っていた。臓器提供があれば命をつなぐことができる人のために身体を役立てることが、彼の願いに沿うことだと考えた。」
自分の子どもが同じような状況にもし追い込まれたら、自分にも同じことが言えるのだろうか。