私たちが住む世界には、目に見えない細菌やウイルスが数多く暮らしています。今でこそ、病気の原因となる菌の存在が明らかになり、さらには健康に役立つ菌がいることも知られてきました。でも、少し前までは目に見えないので存在すら確認されていない時代がありました。そこで、簡単にですが、どうやって微生物が発見されたのか、その経緯を見てみましょう!
ルイ・パスツールの功績
およそ300年くらい前、微生物のスケッチに成功した人がいます。その人の名前は「アントニー・ファン・レーウェンフック」。アマチュア科学者のオランダ人です。彼は、自分で手製の顕微鏡を作って、なんと糞便の中の微生物をたくさんスケッチしていたのです。彼によって、今、腸内細菌として知られている微生物が数多く発見されました。
ただ、当時は微生物は「自然発生するもの」だという考え方が定説でした。これは間違っていて、微生物は「自ら分裂」して増えていきます。そのことを検証したのが、フランスの「ルイ・パスツール(1822〜1895)」です。
彼は、白鳥の形をしたガラスの容器(フラスコ)の中のスープを加熱して、数日間放置して状態を観察しました。もしも、微生物が自然発生するのなら、自然発生した微生物は酸素を使って育っていくはずです。そして、フラスコの中のスープは腐っていくと考えられます。
しかし、フラスコのスープは全く腐敗しませんでした。一方、スープを加熱しないでおいておくと、スープは腐りはじめて、微生物もたくさん増えていました。このことから、微生物が発生するのは「自然に」ではなく、もともとスープの中にいた菌が自分で分裂して増殖したのだと判明したのです。
ちなみにパスツールがこの実験に使った特殊な形のフラスコは、後に「パスツールフラスコ」と呼ばれるようになりました。
こうして、今では科学の世界では当たり前となっている「微生物は微生物によって生まれる」という常識が誕生したのです。
パスツールは、「近代細菌学の祖」として知られ、微生物の発酵に関する研究の他にも、病原菌の発見やワクチン開発、さらには牛乳の低温殺菌法まで、現代に生きる技術の基礎を数多く作りだしました。
そしてその後、細菌の中に病気を引き起こす菌がいることが明らかになっていきます。それは、あるノーベル生理学・医学賞受賞の研究者によって証明されました。その話は、また次回に。