最近、「糖化」や「糖質制限」というキーワードが話題になっています。
でも「よく分からない」「糖質ってじゃあ全部ダメなの?」と思ってらっしゃる方も多いのではないでしょうか。ここで、私が持っている知識の中で、話をまとめてみます。少し長くなってしまいましたが、興味のある方は読んでみてください。
「糖質」の体に与える悪い影響から考えてみる
「糖化」とは簡単に言うと、過剰に摂取した糖質(フルクトースやグルコースなど)が、酵素による反応を受けずにタンパク質や脂質に結合してしまう現象です。糖化反応を受けてしまったタンパク質などの物質は、細胞に対して害を及ぼしてしまい、酸化を促進したりします。その結果、様々な病気を引き起こすきっかけとなり、コラーゲンにもダメージが蓄積してしまいます。こうしたことから、「糖化」=老化の原因とまで言われています。
もう一つの「糖質制限」は、今の現代社会が糖質飽和な食生活であることから言われています。特に、砂糖のショ糖は、血中への吸収が素早く行われてしまい、急激に血糖値を上げてしまう恐れがあります。さらに、この急激に上がった血糖値を急激に下げようとしてインスリンが分泌されるため、反動で血糖値が下がりすぎてしまい「低血糖」という症状になる恐れがあります。低血糖になると、やる気もなくなり急に眠くなったり、その先には鬱病になってしまう場合もあります。
過剰な糖質をまとめて摂ったり、お菓子を継続して食べ続けると糖尿病(高血糖、低血糖)のリスクになることを忘れてはいけません。
10種類の糖は通常は体になくてはならない必須成分
しかし、糖質が全部悪ではありません。よく「炭水化物=糖」だと思われていますが、それは違います。実際は「炭水化物=糖質+食物繊維」なのです。糖質にも単糖や二糖や、オリゴ糖など様々。体の糖化に関わり老化させるのは、単糖や二糖類が大量に吸収された後に関わる反応です。さらに単糖や二糖にも様々な種類があります。逆に食物繊維やオリゴ糖(糖が3~10個程度結合したもの)は腸内環境改善に大切です。まずはその食品の「炭水化物」が何を指しているかを知る必要があります。
人に存在する重要な3つの鎖があります。1つめは遺伝情報を担うDNAやRNAなどの核酸。2つめは20種類のアミノ酸からなる高分子化合物のタンパク質。そして、このタンパク質の半数以上が糖鎖と結合した糖タンパク質であり、生命活動において重要な役割を果たしてるため「糖鎖」は第3の生命鎖と呼ばれています。
「糖化」が「酵素が関わらず、過剰な糖が勝手にタンパク質や脂質に結合すること」である一方、「糖鎖」は「酵素によってタンパク質や脂質の特定の場所に糖が結合する反応」です。決まったところに結合する以上、それが結合しなければ働きません。私たちの体細胞の大半は、こういった酵素反応的に糖が結合したタンパク質や脂質で成り立っています。
ある種の炭水化物(糖質)は単なるエネルギー源である以上に、細胞の機能に対して非常に重要な役割を果たしています。体には10種類の必須単糖類があり、それを含んでいる糖タンパク質と糖脂質は、細胞間の情報伝達を担い、それによって活性物質の分泌や有害菌の駆逐、感染防御などを行っているのです。
私たち人間にはマンノース、ガラクトース、フコース、キシロース、グルコース、シアル酸、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、グルクロン酸、イズロン酸の10種類の基本糖が必要です。グルコースから他の必須単糖を十分に合成することは不可能なので、これらの糖は食事から供給されなくてはならないのです。
糖タンパク質や糖脂質などの複合糖質は、免疫調節においても重要です。マンノースはマクロファージの活性化、ガラクトースは創傷治癒、フコースはアレルギー皮膚炎の抑制、シアル酸はアナフィラキシーの抑制などが報告されています。また複合糖質の糖部分は、腫瘍細胞の転移を抑制することも研究されています。
糖が体の中で悪さをしないためにも、糖質の摂取はバランスと種類が大事
糖化や糖質制限の話題には、解糖系や糖新生の議論が必ず出てきます。ただし、この議論は基本的には「グルコース」を中心とした内容となり、その他の必須単糖は考慮されていないことが多いのです。糖を全体として捉えるならば、エネルギー論のみではなく、糖タンパク質や糖脂質を含めた細胞間ネットワークや免疫系の議論が必要であり、安易に全ての糖質を制限することは細胞維持にとって危険なのです。
糖化の原因は「過剰で行き場をなくした糖質」です。もちろん砂糖単体だとショ糖の固まりなので血糖に大きく影響を与えます。糖質過多の食事もお薦めしません。ですが、必須単糖は食事からとる必要があり、過剰な糖質制限は危険です。もし、実際には血糖の数字が悪くないのに、「過度に糖質を制限しなくては!」と思うこと自体がストレスになります。それで余計に不調になっては元も子もありません。全てはバランスの上に成り立っているのです。
人それぞれに一日の糖質消費量が異なり、そこを見極めず低糖質ダイエットとか過度な糖質制限は怖いです。脂肪や筋肉から糖は作られますが、その脂肪や筋肉を作るのも糖で、結局循環していますよね。インとアウトの一方だけを減らすとバランスは崩れてしまいます。甘いものや極端な食べ過ぎをまず気を付け、自分の体がどういった状態にあるかを知ることが大切です。そのためには、詳細な血液検査を受けて体を知ること、そして食生活を見直してみることも良いですね。
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