有機JAS規格は厳しい検査をクリアした、自然界の力で生産された食品
有機食品とは、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らず、自然界の力で生産された食品のことです。1999年に改正されたJAS法に基づいて有機農産物と有機農産物加工食品のJAS規格が定められました。
例えば、「有機農産物」「有機野菜」「オーガニック野菜」などと表示するには、
- 農薬や化学肥料は原則として使用しないこと
- 種まきまたは植え付けの時点からさかのぼり、2年以上(多年生作物の場合、最初の収穫前3年以上)禁止されている農薬や化学肥料を使用していない水田や畑で栽培されていること
- 有機農作物の生産者は、生産から出荷までの生産工程管理・格付数量などの記録を作成していること
- 遺伝子組み換え技術を使用していない
などの条件を満たしていることが必要です。
その上、農林水産大臣に登録された登録認定機関の認定を受けなければならず、認定に当たっては、書類審査と実地検査が行われます。
また、登録認定機関は、認定を受けた農家がその後も有機JAS規格に基づいた生産を行っていることを、最低1年に1回は調査することとなっています。さらに、その登録認定機関が適正な業務運営を行っているかについても、毎年1回、独立行政法人の農林水産消費技術センターが監査を行うことになっています。
有機JAS規格と「無農薬」という言葉はイコールではない
このように有機JAS規格は厳しい基準の下で生産されていますが、必ずしも「全て無農薬」ではありません。有機農産物に用いる防除方法だけでは有害動植物を効果的に防除できないなど、やむを得ない場合には、有機農産物の国産基準に準拠した30種類の農薬の使用が認められているのです。そのため、必ずしも「有機=無農薬」という意味ではありません。
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/yuuki_kikaku_a091027.pdf
「有機」以外に「無農薬野菜」「減農薬野菜」という言葉を見かけることがありますが、これらの表現は2004年4月1日に農水省による「特別栽培農産物ガイドライン」で使用禁止となっているので注意が必要です。
また「無農薬」「減農薬」については、法律に基づいた明確な基準も無く検査機関もないのが現状です。無農薬と言っても化学肥料は使用されており、隣の畑で農薬を大量に使用している場合もあります。肥料は一切問われないので、化学肥料をいくら使ってもよいのです。
そのため「無農薬」の言葉は現在禁止されています。
「減農薬野菜」という言葉のマジックもあります。
これは、「その地域で通常使用される農薬の使用回数を半分に減らす」という意味です。もし20回使用していたら10回に減らしても「減農薬」と謳うことができます。一方、6回使用していて4回に減らしても減農薬にはなりません。
こういった経緯から、「減農薬野菜」の言葉も使用禁止されています。
消費者側もきちんと農業の現状を把握する必要があるのではないか
農薬と害虫がどちらが危険かと言われると、害虫や農薬も種類によるので一概には難しいです。
農薬も使用上限値があり、その中での使用は基本的に安全です。ただし、わずかに健康にリスクはある。
安定的な食料供給を得るために農薬を受け入れるか、今年は収穫出来ないかもしれないけど無農薬を選ぶかではないでしょうか。
僕が言いたい事は、有機にダマされてはダメと言う事ではないです。
有機JAS規格は厳しい審査があり、それを取得するために、消費者に受け入れるために多くの農家さんが悪戦苦闘しています。ただ、消費者に食料を届けるためには最少量の農薬はどうしても必要。それを非難してはいけないのです。
昔は農薬が無くても健康に食品を食べていました。でも人口が増大し、無農薬では規模が追いつかなくなった。世界中の人々に食事を届けるため、安定した食料供給が必要。そのためには現状の規模を維持するために農薬や化学肥料は欠かせないのです。
自分だけが無農薬野菜を食べれば良いという視点ではなく、60億人の餓えや食糧難などを考慮した目線で考える必要があります。
農家さんは、常に多くの人々に良質な野菜を届けたいと思っています。本当にそんな純粋な方々が多いです。でも農薬を減らすと「形が変だから返品された」「虫が一つ入ってたから全部廃棄になった」そんな声を数多く聞きます。そんな方々の切実な声を聞いて、僕は単純に「無農薬が良い」とは言えません。
「無農薬だから安全」という見解は、物事の一つの側面でしかありません。有害な虫が植物に毒を入れたらどうなるのか?形がいびつになり、栄養価にバラツキが出ても良いのか?虫にやられて収穫がゼロになり食べ物が無くなったらどうするのか?無農薬にすることによる不の側面を知るべきだと思います。
例えば、原子力問題に照らし合わせると、電力は一人一人が節約すればまかなえます。
でも、食料は皆が自給自足するならまだしも、それをしないのに無農薬のものを大量に供給して欲しいという考えに無理があると思うんです。
食料は何もしなくても誰かに供給して貰える、という待ちの考え方を変える必要があるのではないでしょうか。