私の過去の記事で「放射性物質」や「放射能」について掲載してきました。その中でも、食品への付着や人体への影響を気にされている方も多くいらっしゃると思います。ただ、「放射線」は世界では日常的に食品に対して利用されています。それはどういうことでしょうか?
貯蔵期間の延長や殺菌・殺虫での放射線利用
食品は、そのまま放っておくと腐ってしまったり、虫が繁殖したりしてしまいます。特に現代、大規模に栽培したり貯蔵しておくためには、防菌・防カビ・防虫などの処置が欠かせない技術になっています。そこで、「放射性物質(コバルト-60やセシウム-137)」を利用して、食品にX線やガンマ線、電子線などが日常的に照射されているのです。これは、食中毒の予防や、残留性がある農薬・薬剤の代替手段として注目されています。
日本でも、1974年から北海道で「ジャガイモ」への放射線照射が始まりました。これは実は、食品への放射線照射を商業利用した、世界で初めての試みなのです。ジャガイモへの放射線照射の目的は、芽が出るのを防ぐためです。ジャガイモの芽には「ポテトグリコアルカトイド(PGA)」という毒性の物質が含まれています。そのため、日本ではジャガイモへの放射線照射が認められています。ただ、日本で照射が許可されている食品はこの一品目だけで、他の食品への照射はそれ以来全く認められていません。一方、世界に目を向けると200品目以上の食品に対して、放射線照射が行われているのです。
どんな食品に対して放射線照射が行われているの?
最も多いのは「香辛料」や「乾燥野菜」の殺菌です。香辛料は熱を加えると香味が失われてしまいます。香辛料への放射線照射は、アメリカ、カナダ、EU全国、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、中国など、50カ国以上で行われています。アメリカではその他にも、鶏肉や牛豚の赤身肉、青果物などにも認可されています。その他にも次のような目的で色々な食品に照射が行われています。
パパイヤ・マンゴー:熟度を調整
イチゴ・ミカン・魚・ソーセージ・ベーコン:保存期間の延長
小麦粉・米:殺虫
肉・魚・スパイス:殺菌
ウイスキー・焼酎:熟成促進
こういった照射が200品目以上あるのです。
世界は放射線を「未来の安全テクノロジー」として推進しています
EUとアメリカを比較すると、アメリカの方が照射許可品目はかなり多いです。アメリカでは「O-157による食中毒防止」という名目のもとで、放射線を「未来の安全テクノロジー」といって推進してきました。アジアに目を向けると、2004年にはアジア全体で約17万トンの食品に放射線照射が行われています。そのうち14万トンは中国で照射された食品です。他にもベトナムやマレーシアでも照射されています。また、世界の放射線照射についての会議ではEUも含めて「なぜ日本では食品への放射線照射を認めないのか!」と迫ったりもしてきました。すべては「原子力の平和利用」というキーワードのもとで、世界的に推進されてきた運動なのです。
放射線照射された食品にもリスクがある
私は、食品への放射線照射が良くないとは思いません。きちんと照射線量が決められていて、それを守っている限り、人の体へのリスクは最小限に抑えられます。また、この処理は「放射性物質が直接付着」するわけではなく、放射線を当てるだけなので「食品そのものが放射能を帯びる」わけではありません。もしも放射線照射が禁止されると、その代わりに農薬や薬品が大量利用されるのは明らかです。
しかし、食品に放射線を浴びせると、少なからず遺伝子破壊や遺伝子変異が起こります。これは食品成分が変質することを意味しています。もともと食品中に存在しない物質が生まれたり、フリーラジカルが作られたりし、これらの物質は食品中に残ることになります。こういった食品を摂り続けることで、毒性や体重の減少、生殖器官の異常、子どもに対する弊害などが報告されています。
これまで放射能を「平和利用」と謳ってきた世界各国が、今回の日本の原発問題で「放射能は危険だ!」「日本の食品は輸入しない!」と言っているのは少しいかがなものかと思います。日本は「ジャガイモ」で許可されてから37年間、一品目もその他の食品に許可されなかったほど、放射能に対して敏感で厳しく規制してきました。その対応が良いか悪いかは別として、「放射能に関する食品に対して、世界で最も厳しく対応してきた国」といっても良いのです。そして、設定されている上限の線量は、世界と比べても相当低い値なのです。
もしも、世界の他の国々で、放射線を日常的に食品に照射していることを人々が知って、今の日本の問題と照らし合わせると、恐らく世界中で「放射線の食品利用」について大混乱が起こるのではないでしょうか?だから世界はそのことを、大きく広めていません。日本が情報をきちんと世界に発信できていないのと同様に、世界も自国の情報をきちんと開示して、世界の食料事情にこれ以上混乱をきたして欲しくないと願っています。