住民同士の信頼感が低い地域ほど、高血圧を誘発するという研究データが発表されました。これは、島根大学の疾病予知予防研究拠点のグループによるものです。
ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)と呼ばれる地域社会の人間関係から血圧に与える影響にアプローチしたもので、このような研究成果は世界でも初めてだそうです。この内容が、アメリカの「アメリカンジャーナル オブ ハイパーテンション」に掲載されました。
人間関係の「信頼」が低ければ血圧が高めになる
2008年から2009年の間に調査が行われました。雲南市、出雲市に住んでいて、特定検診を受けた住民を対象に実施されました。
インタビュー項目の中で、「他人は機会があればあなたを利用すると思うか」という問いに、「はい」と応える人の割合と、血圧との関係について調べられました。その中で、「はい」と答えた人の割合が上がるごとに最大血圧が高くなる傾向がありました。このように、他人に対する信頼度や不安感が、高血圧に影響している事が明らかになりました。
ソーシャル・キャピタルをどうやって充実させていくか
ソーシャル・キャピタルとは、「社会問題に関わっていく自発的団体の多様さ」「社会全体の人間関係の豊かさ」を意味します。または地域力とか社会の結束力とも言えます。多くの友人と付き合ったりスポーツクラブのような団体に入ったりなど、「顔の見える付き合い」の全てを指しています。このソーシャル・キャピタルという考え方は、国際的にも広く認知されています。そして、この考え方に従って、色々な研究が行われているのです。
このような様々な研究データが示しているのは、市民同士のコミュニケーションの密度や度合い、さらには市民と行政の関係が活発であるほど、豊かな社会が作り出されるということです。この関係性を高めていくためには、地域組織や団体での活動やボランティア活動、友人知人とのつながりを積極的に進めていくことです。
ソーシャル・キャピタルが豊かな地域は、政治的な意思疎通や、子どもの教育成果の向上、さらには近隣の治安の向上、地域経済の発展など、経済面社会面で良い効果をもたらしています。都市への一極集中型の政策ではなく、地方分権型の社会を作ることを大切にし、地方での経済発展を目指していく意味でソーシャル・キャピタルの重要性が高まっています。
この考え方が、今回のように「健康」にも大きな影響を与えることが分かりました。個人レベルではなく、集団での心理や地域性などを考慮に入れると、より価値の高い健康施策にも繋がることを示した結果であると言えます。
仲間や友達と楽しみながら「健康」を分かち合う。そのようなソーシャル・キャピタルを通じた精神的な充実感や豊かさが、体全体の健康管理にも多くのメリットをもたらすのです。現代は、集団での活動や地域社会での活動が薄れて、「個人」での活動や「顔の見えない相手との交流」が主流になっています。しかし、そのような中では精神的な安定はなかなか得ることができません。
ソーシャル・キャピタルの考え方をうまく日常生活、そして社会生活に取り入れることで、精神的にも肉体的にも「健康」を得ることができます。その「健康」な自分が、個人としての自分の活動をさらに高めてくれるはずです。